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デジタル人民元(数字人民幣)の特徴



『春秋航空、中国初のデジタル人民元による航空券購入受け付け』というニュースがありました。(AFPBB News 2021/04/20 https://www.afpbb.com/articles/-/3342939)


・中国の格安航空会社(LCC)、春秋航空は16日、同社の上海発深圳行きの便で、中国初となるデジタル人民元による購入を受け付けたことを明らかにした。

・今後はさらに、オンライン消費決済や機内オフライン決済、オフラインでの2次元バーコード読み取りによる決済、店舗でのワンストップのデジタル人民元接続サービスなど、航空機での旅行・移動や拡張分野で運用を広げる。

・デジタル人民元の試行は現在、盛んに行われている。試行とテストが19年末に深圳市や蘇州市(江蘇省)、雄安新区(河北省)、成都市(四川省)、北京五輪会場で開始され、20年10月にはテスト地域が上海市、海南省、長沙市(湖南省)、西安市(陝西省)、青島市(山東省)、大連市(遼寧省)に拡大された。


というものですが、現在、中国人民銀行が「デジタル人民元」導入に向けた準備を急速に進めています。

今回は、中国デジタル人民元の特徴について、ポイントを整理しました。


中央銀行デジタル通貨


・中央銀行デジタル通貨(CBDC)Central Bank Digital Currency は、「法定通貨」の代替として、中央銀行が発行するデジタル化された通貨。

・CBDCには、①主に金融機関同士の大口資金決済に利用される「ホールセール型(限定利用型)」と、②一般の消費者や企業も利用できる「リテール型(一般利用型)」がある。

・現在、中国人民銀行(中央銀行)が発行を計画しているデジタル人民元は、「リテール型(一般利用型)」のCBDC 。

・中国では、デジタル人民元のことをCBDC ではなく、DCEP(Digital Currency Electronic

Payment)とすることが多い。

・中国人民銀行は「デジタル人民元」の実証実験を相次いで実施し、2022 年にも一部の地域で試験的に運用を開始するとしている。


現預金との比較


・中国人民銀行にとって法定通貨の発行・流通コストを下げられるというメリットがある一方、消費者にとっては匿名性低下の問題がある。

・中国人民銀行は、「支払者の情報が支払先企業に対して匿名化される」機能や「一定限度額までは匿名の状態でデジタルウォレットの利用を可能にする」機能等の構想を示す。

・デジタルマネーは、大災害時にネットワーク回線のシステム障害によって利用できなくなるリスクがあるため、デジタル人民元では、「オフライン決済」の研究・実証試験が行われている。

・利息の付与は計画していない。


第三者決済(スマホ決済等)との比較


・中国では、すでにAlipayやWeChat Payなど、民間のスマホ決済が急速に普及。

・これら民間のスマホ決済との根本的な違いは、デジタル人民元が法定通貨であること。それが両者の信用リスクの差。

・ただし、中国のスマホ決済企業は、中国人民銀行に100%の準備金を預けるため、中央銀行により実質的に保証される形。

・デジタル人民元は、銀行等の仲介機関自体がデジタル人民元の発行主体となる可能性がある。

・その場合、銀行等は中国人民銀行に100%の準備金を預けることになるはずで、デジタル人民元とスマホ決済は、信用リスクの面でほとんど変わらない可能性が高い。

・つまり、実際の利用方法という点では、スマホ決済とデジタル人民元に大きな違いは見られない。

・消費者にとっては、割引などのキャンペーンがある既存のスマホ決済の方がお得感があるといえる。


暗号資産(仮想通貨)との比較

・代表的な暗号資産であるビットコインは法定通貨ではなく、裏付け資産がないため金銭的価値が上下に大きく変動する。

・これに対し、デジタル人民元は、中国人民銀行の管理の下で実物の人民元に金銭的価値が紐づけられる。

・米フェイスブックを中心として計画する「ディエム(旧リブラ)」は、特定の通貨や通貨バスケットを裏付け資産とする「ステーブルコイン」であり、ビットコイン等に比べて金銭的価値が安定。

・ただし、中国政府は、人民元に紐づいたステーブルコインの発行を禁止する法案を作成中であり、デジタル人民元は中国国内で流通する唯一の人民元に紐づくデジタル通貨になる見込み。


銀行等を介して供給される「間接型」発行


・CBDC の発行形態としては、

①中央銀行が一般の消費者や企業に直接発行する「直接型」、

②中央銀行の発行したCBDC が銀行等を介して供給される「間接型」

という2つのパターンが考えられる。

・デジタル人民元は、②の「間接型」発行形態になると見込まれる。

・個人(消費者)は、仲介機関(銀行等)に現預金を入金し、それと交換する形でデジタル人民元をチャージする。

・次に、チャージされたデジタル人民元を店舗での支払い(キャッシュレス決済)や個人間送金に利用する。

・仲介機関は、個人に配布するデジタル人民元と同額を100%準備金として中国人民銀行に預け入れ、中国人民銀行はそれと引き換えにデジタル人民元を仲介機関に発行する。

・この100%準備金により、「1人民元=1デジタル人民元」という金銭的価値が維持される。

・現在のところ、仲介機関としてどこが指定されるかは未定だが、市中での実証実験試験では、四大国有銀行(中国銀行、中国建設銀行、中国工商銀行、中国農業銀行)と交通銀行、郵政儲蓄銀行が指定された。

・銀行以外も仲介機関となる可能性があり、中国移動、中国電信、中国聯通、アント・グループ、テンセント等の社名が挙げられている。

・現在のところ、デジタル人民元の発行主体は、中国人民銀行になる可能性が高い。


デジタル人民元の具体的な利用手順


・深セン市や蘇州市で実施された市中での実証実験における利用手順では、以下のとおり。

①消費者は、自分のスマートフォンに専用のアプリを入れ、身分証の番号を入力して、デジタルウォレットを開設する。

②その後、中国人民銀行が指定した仲介機関(銀行)を選択してデジタル人民元を受け取る。(実証実験では、デジタル人民元が無料で配布されるため、消費者は仲介機関への現預金の入金は不要)

③支払い方法は、既存のスマホ決済と同様に、消費者が店舗のQR コードを読み取る方法、または自身のスマートフォンに表示させたQR コードを読み取ってもらう方法がある。

・デジタル人民元の利用媒体は主にスマートフォンが想定されているが、2021 年1月に上海市の病院内で行われた実証実験では、「カード型」のハードウォレットが使用された。

・年配者などスマートフォンを所持していない層や、その操作に不慣れな層にまで幅広く普及させることを目指している。

・オフライン決済は、蘇州市で2020 年12 月に行われたテストで実施された。スマートフォン同士を接触させることでデジタル人民元の授受ができる仕組みになっている。


「トークン型」と「口座型」のどちらの発行形態か


・「トークン型」とは、電子的なデータ(媒体)そのものに現金のように価値が付与されている形態。それをデジタルウォレット等で保有している人が価値の所有者になる。

・店舗での支払いの際は、当事者の口座を経由せず、スマートフォンと決済端末またはスマートフォン同士のデータ授受で決済が成立する。

・その際、支払者の情報は不要であり、支払い手段に使用しているもの(この例ではCBDC)が偽物でないかが重視される。

・「口座型」は銀行預金のように、所有価値が口座の残高情報で管理される。

・支払いの際は、一度情報が銀行に渡され、当事者の口座間の振替(価値の移転)により決済が完了する。

・デジタル人民元については、詳細が明らかにされておらず、どちらの発行形態となるか公式には表明されていない状態。

・脱税や不正送金の防止のために一定の情報を取得したいという中国政府の意図を踏まえると、トークン型と口座型が併用される可能性もある。


参考:デジタル人民元の基本的な特徴と仕組み(大和総研)

https://www.dir.co.jp/report/research/capital-mkt/it/20210216_022089.html


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